1級土木施工管理技士の資格は、国が定めた公的な技術者資格の中でも特に実務性が高く、取得者は現場の責任者として配置要件を満たす重要な存在です。そのため「持っていれば転職には困らない」と言われることもありますが、実際のところはどうなのでしょうか。まず押さえておきたいのは、地域や企業規模によって需要の強さにはばらつきがあるという点です。たとえば都市部の中堅ゼネコンやインフラ系の企業では即戦力を求める傾向が強く、資格を持つ中堅層の採用には積極的です。一方、地方や小規模な事業者では「資格より実務経験」「人柄重視」といったケースも少なくありません。
また、資格保有だけで評価されるのではなく、「どのような現場で、どんなポジションを任されていたか」「工程・安全・コスト管理のどこに強みがあるか」など、具体的な業務履歴が問われます。特に40代以降の転職では、年齢と報酬のバランス、マネジメント適性が厳しく見られることもあります。つまり「資格を持っている=即高評価」とは限らないのが現実です。とはいえ、少子高齢化の影響で技術者不足が進んでいる今、1級土木施工管理技士を持つ人材が業界内で必要とされていることもまた事実。市場価値はある、ただし「過信は禁物」。これが現在のリアルな状況です。
なぜ辞めたいのか?転職動機の棚卸しとリスク回避
転職を考え始めたとき、まず見直すべきなのは「本当に今の職場を離れる必要があるのか」という点です。よくある理由としては、給料が上がらない、評価が不透明、長時間労働がつらい、人間関係がうまくいかないなどが挙げられます。しかし、それらは本当に「転職でしか解決できない問題」なのでしょうか。一部の不満は、部署異動や上司との対話、業務改善の提案などによって変えられる可能性もあります。
一方で、会社の方針や体質、今後の成長見通しが合わないと感じる場合は、自分の価値観とのズレが生じているサインです。たとえば「新しい工法にチャレンジしたい」「ICT施工を取り入れたい」という思いがあっても、現場では従来のやり方に固執している…という場合、我慢を重ねることでモチベーションを削がれてしまうこともあります。自分の成長を止めないためにも、今の環境に残るリスクと離れるリスクを、冷静に比較してみることが必要です。
大切なのは、「今がつらいから逃げたい」という気持ちだけで判断しないこと。感情ではなく、事実ベースで現状を見つめ直すことが、後悔しない転職への第一歩になります。可能であれば、信頼できる同業者や第三者に自分の考えを話し、整理するのも有効です。転職は人生を左右する選択だからこそ、主観だけでなく他者の視点も取り入れながら、しっかりと棚卸しを行いましょう。
年収だけで決めない。環境・成長・裁量をどう見るか?
転職活動を始めると、どうしても最初に目が行くのは「年収」の数字かもしれません。もちろん、実力に見合った報酬を得ることは重要です。ただ、それだけを軸に判断してしまうと、転職後に「思っていた働き方と違った」と感じるリスクもあります。たとえば、年収は上がったものの、業務量が過剰で休みが取れない、現場での裁量がなく指示を待つばかり、スキルアップの機会が乏しい――こうした不満を感じるケースも少なくありません。
現場管理職として働く以上、単に待遇だけでなく、「どんなチームで、どんな裁量を持って働けるか」「若手とベテランがどう連携しているか」「会社は現場の意見をどう受け止めているか」といった職場文化にも目を向けることが大切です。また、技術力や管理能力をさらに磨きたいと考えるなら、教育体制や現場の多様性、最新技術への取り組み姿勢も重要な判断材料になります。
このように、年収の金額だけでなく、労働時間や休日制度、社内のコミュニケーションの取り方なども含めて総合的に比較することが、後悔のない転職につながります。「どんな働き方をしたいのか」「どこで成長したいのか」を言語化しておくと、求人票の読み解き方や面接時の質問の質も変わってきます。数字だけでは見えない“本当の働きやすさ”を見極めることが、転職成功の鍵になるはずです。
転職エージェント任せは危険。自分軸を持った進め方とは?
転職活動を進める上で、多くの人が転職サイトやエージェントを活用します。確かに、非公開求人の紹介や企業との仲介といった面で有効な手段ではありますが、すべてを任せきりにしてしまうのは危険です。なぜなら、エージェント側にも目標や都合があり、必ずしも求職者にとって最良の選択肢を提示してくれるとは限らないからです。重要なのは、「紹介された求人が、自分の働き方や価値観と合っているか」を冷静に見極めることです。
まず、自分自身が何を重視するのかを明確にしておく必要があります。年収、勤務地、工事種別、現場規模、チーム体制、休日日数、育成方針…。これらの優先順位を整理することで、求人内容と自分の軸のズレに早く気づくことができます。面接でも「質問される側」だけでなく、「自分から見極めにいく」姿勢を持ちましょう。具体的には、現場の平均残業時間や休日取得率、資格取得支援の有無、若手の定着率など、現実的なデータを尋ねることが有効です。
また、書類の準備や面接対策を通じて、自分の経験や強みをどのように伝えるかも重要なポイントです。単なる職務経歴の羅列ではなく、「どんな工夫をしたか」「何を改善したか」といったエピソードを交えることで、あなたの仕事への姿勢が伝わりやすくなります。転職は情報戦であると同時に、自分を見つめ直す作業でもあります。他人任せにせず、自分で方向を定めたうえで、信頼できる支援を上手に活用していくことが、納得のいく転職につながるはずです。
ご自身の価値観に合った働き方を見つけたい方は、以下の採用ページも参考にしてみてください。
▶︎ https://www.okada-kensetu.jp/recruit
転職は「逃げ」ではなく「選択肢」。納得できる道を選ぶために
転職を考えることは、決して後ろ向きな行動ではありません。むしろ、自分の働き方や将来を真剣に見つめ直すきっかけになる、前向きな「選択肢」のひとつです。大切なのは、焦らず、過信せず、自分の足で情報を集め、納得のいく判断を下すこと。資格や経験は、あくまで武器のひとつであり、それをどう活かすかは自分次第です。
この記事を通じて、1級土木施工管理技士としてのキャリアをどう築いていくか、その判断軸を少しでも整理できたなら幸いです。転職する・しないにかかわらず、自分の軸を持ち、納得感を持って働くことが、長く続けられる道につながります。
もし、今の働き方に違和感がある、自分に合った環境を探したいと感じている方は、まずは身近な情報から一歩踏み出してみてください。